巧妙な手口でお金を奪う特殊詐欺。
2000年初頭にオレオレ詐欺という手法が登場してから、何か新しい詐欺被害が発生するたび、メディアでも取り上げられていますが、手口も次第に進化しています。
今回は数ある特殊詐欺犯罪の中からキャッシュカード詐欺盗についてお話しします。
自分は大丈夫と思っている方も、知っていて損はない情報だと思うので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
キャッシュカード詐欺盗の最新データ
そもそも、キャッシュカード詐欺盗がどんな犯罪なのでしょうか。
まずキャッシュカード詐欺盗の手口と被害状況に関して、警視庁が公開している最新のデータから見ていきましょう。
キャッシュカード詐欺盗とは?
キャッシュカード詐欺盗とは、警察官などになりすまし電話をかけ「キャッシュカード(銀行口座)が不正に利用されている」など、嘘の手続きを説明した上で、キャッシュカードを盗み取る手口です。
電話での説明後に”受け子”と呼ばれる受け取りを任された人物が、私服警察官や銀行協会職員等になりすまして自宅を訪ね、被害者が目を離している隙に、あらかじめ用意しておいた偽のカードと本物のカードをすり替えを行います。
封筒の封は開けずに保管しておくようにと言われる場合もあり、被害者が封筒の中身が偽物であると気づかない内に口座から現金を引き出してしまいます。
キャッシュカード詐欺盗の年間被害件数と被害額
警視庁「令和3年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」から、キャッシュカード詐欺盗の被害件数と被害額を見ていきましょう。
キャッシュカード詐欺盗は、オレオレ詐欺や還付金詐欺、架空料金請求詐欺などと共に特殊詐欺と呼ばれています。
特殊詐欺の認知件数は2017年をピークに減少傾向にあり、被害額も2014年をピークに減少してきています。
2021年のキャッシュカード詐欺盗被害は、認知件数2,602件・被害額39.5億円でした。
認知件数は前年に比べ-248件(-8.7%)で、被害額も-3.2億円(-7.4%)といずれも減少しています。
総認知件数に占める割合も17.9%と-3.1ポイントの減少ですが、完全撲滅には至っていません。
キャッシュカード詐欺盗の被害者における高齢者の割合
世の中には様々な犯罪がありますが、特殊詐欺では高齢者が被害者となる割合が非常に高いと言われています。
なんと特殊詐欺被害に遭った方のうち、全体の8〜9割が高齢者なのです。
警視庁のデータによれば、キャッシュカード詐欺盗の被害者における高齢者の割合は98.4%。
犯行の手口が似ている預貯金詐欺(98.8%)やオレオレ詐欺(95.4%)と同じように、高齢者に占める割合が高いと言えます。
更にキャッシュカード詐欺盗の被害者となった高齢者は、その大半が女性なのです。
家族や親しい人の中に、1人暮らしの高齢女性がいる場合、キャッシュカード詐欺盗に巻き込まれないよう気をつけておきたいですね。
キャッシュカード詐欺盗と預貯金詐欺の違いとは?
キャッシュカードを狙った詐欺は、預貯金詐欺とキャッシュカード詐欺盗に分けられます。
いずれもキャッシュカードを騙し取るという手口ではあるものの、受け子と呼ばれる人物がどのようにキャッシュカードを持ち去るのかという点で異なります。
まずキャッシュカード詐欺盗の場合、キャッシュカードを持ち帰るのではなく、カードを封筒に入れて封印するフリをします。
こうしてとても丁寧に個人情報を扱っているように見せておき、カードを入れた封筒の封をするのに印鑑が必要だと言って高齢者を玄関先などから離れさせ、その隙に別のカードが入った封筒と入れ替えるのです。
さらに「キャッシュカード保護のため、○日まで封筒を開けないで」などと言って立ち去るケースも…。
このまま保管しておくよう告げられれば、わざわざすぐに封を切ることはありませんよね。
しっかりと封をした封筒に偽物のキャッシュカードが入っているなど考えないため、被害者は犯行に気づくのが遅くなってしまいます。
そうしてキャッシュカードが盗まれたことにも気づかない間に、口座から現金が引き出されてしまうのです。
一方預貯金詐欺の場合には、電話口で言われたことを信じて高齢者自身がそのままキャッシュカードを渡してしまうよう計画されています。
無意識のうちにキャッシュカードを奪われるキャシュカード詐欺盗と異なり、言葉巧みにキャッシュカードを渡さなければならないといった錯覚に陥れるのが、預貯金詐欺の手口です。
キャッシュカード詐欺盗の最新手口
被害件数自体は減少傾向にあるキャッシュカード詐欺盗ですが、まだまだ被害が出ている状況です。
大々的にニュースなどでも取り上げられていますが、被害がなくならない理由の一つに、手口が少しずつ進化しているということが挙げられます。
そこでキャッシュカード詐欺盗の最新の手口をまとめてみました。
キャッシュカード詐欺盗の犯人はどんな人になりすます?
まずキャッシュカード詐欺盗の犯人はこのような人物へとなりすまし、電話をかけてきます。
【キャッシュカード詐欺盗の犯人はこう騙る!】
- 親族
- 金融機関職員/銀行員
- 官公庁職員(金融庁など)
- 警察官(特殊詐欺グループ捜査班)
- 家電量販店、百貨店職員
キャッシュカード詐欺盗の犯人は、官公庁職員や金融機関職員など信頼のおける地位の人間を偽って接近してきます。
普段の生活で、金融機関や警察署から電話がかかってくることなんてほとんどありませんよね。
そういった場所から電話があるだけで、何か悪いことでもしたのではと不安な気持ちでいっぱいになります。
もし知らず知らずのうちに、自身が犯罪に絡んでいるともなれば、家族に迷惑をかけないためにも1人ですぐに解決したいと思うことでしょう。
つまり犯人は、高齢者の不安や恐怖心、家族に迷惑をかけたくないという気持ちを利用して、漬け込んでくるのです。
キャッシュカード詐欺盗の犯人はどんな手口で情報を聞き出す?
金融機関や官公庁の職員になりすました犯人は、以下のようなセリフで煽ったあと、情報を聞き出します。
【キャッシュカード詐欺盗の犯人はこう騙す!】
- 詐欺グループを逮捕したら、あなたの口座がリストに載っていた
- 個人情報が悪用されて、預金が不正に引き出された
- キャッシュカードが偽造された可能性がある
- 還付金を振り込むために、今すぐキャッシュカードを作り直さなければいけない
キャッシュカード詐欺盗の犯人は、口座が詐欺グループなどによって悪用されたと不安を煽ってきます。
そのほかにも、キャッシュカードが偽造された可能性があると言って、知らず知らずのうちに犯罪に巻き込まれたかのように誘導する場合も。
金融機関職員や警察官を名乗る人物からの電話で、すでにパニック状態になっているところに「詐欺グループ」「悪用」「不正」などと言われれば、冷静な判断などできなくなりますよね。
さらにコロナ禍で様々な給付金が支給されたこともあり、給付金や還付金を振り込むために手続きが必要だと説明するケースもあります。
不安な気持ちを煽るだけでなく、予想していなかった収入が得られるという嬉しい気持ちも、犯人グループが利用する手口としてあり得るということを頭に入れておきたいですね。
キャッシュカード詐欺盗に遭わない為の防犯対策!
不安や恐怖を煽って巧妙な手口でキャッシュカードを盗みとるキャッシュカード詐欺盗。
その被害に遭わないために、私たちにどのような対策ができるのでしょうか。
ここからは、効果的な防犯対策とその理由についてご紹介します。
【キャッシュカード詐欺盗に遭わない為の防犯対策!】
- 通帳・キャッシュカードを他人に渡さない
- 個人情報も伝えない
- 相手の団体名を確認して折り返すようにする
- 常に留守番電話設定にする
- 迷惑電話防止装置付きの電話機を使用する
- 普段から家族間で連絡を取り合う
通帳・キャッシュカードを他人に渡さない
まず、キャッシュカード詐欺盗に限らず通帳やキャッシュカードは他人に渡さないことが基本です。
メディアで取り上げられたり、銀行へ行けばATM付近にポスターが掲示されていますが、警察官や金融機関職員等がキャッシュカード・通帳などを預かったり、回収することはありません。
どんなに上手く話を進められても、通帳やキャッシュカードを提出するように求められれば、何かおかしいと立ち止まって考えられるようにしておきたいですね。
個人情報も伝えない
犯人は電話口で言葉巧みに個人情報を聞き出してきます。
中にはグループで犯行を行い、はじめは警察官、次に金融機関職員などと次々と電話をかけてくるような犯人もいます。
次々に電話がかかり、あれこれ聞かれれば、早く終わらせたいという気持ちから相手の質問にも答えてしまいそうなものですが、個人情報を伝えてはいけません。
特に口座から現金が引き出されるリスクがある以上、暗証番号は絶対に教えてはいけません。
各機関のホームページでも、暗証番号を聞き出すことはないと明記されています。
電話口の相手が暗証番号の話を持ち出したら、詐欺だと疑って良いでしょう。
住所や氏名、生年月日といった個人情報も、暗証番号を割り出す材料として使われるかもしれません。
また、家族構成や在宅時間・資産額を聞いてくる場合もあります。
こういった情報をもとにして強盗に入られる可能性もあるため、個人情報は口外しないのが一番です。
相手の団体名を確認して折り返すようにする
金融機関や警察官を名乗る人物から電話があったら、相手のペースにのまれてしまう前に一度電話を切りましょう。
折り返し連絡したいのでと理由をつけて、団体名や部署、名前などを尋ねれば、犯行を諦めさせる効果も期待できます。
そして、電話を切ったら金融機関や警察署へ直接連絡して、事実であるのか聞いてみましょう。
もちろん家族へ相談するのも一つの手です。
その場で自分1人で解決しようという考えが非常に危険です。
一度電話を切って冷静に考えられる時間を設けたり、第三者に相談するよう日頃から意識していたいものです。
常に留守番電話設定にする
キャッシュカード詐欺盗をはじめとする特殊詐欺は、いずれも電話での連絡から始まります。
そのため、知らない相手からの電話には出ないようにしてしまうのも、一つの有効な防犯対策だといえます。
自宅にある固定電話には、発信者を知らせるディスプレイは付いていますか?
もしついていないのであれば、在宅中も留守番電話設定にしておきましょう。
少し不便かもしれませんが、用事がある人には留守電にメッセージを残してもらうようにしておけば、詐欺の犯人と接触するリスクを軽減することができます。
また、見ず知らずの相手に電話番号を知られないために、各世帯に配布される電話帳から削除してもらっておくとさらに安心です。
迷惑電話防止装置付きの電話機を使用する
ディスプレイ付きの電話機であれば、電話帳に登録してある発信者の名前や電話番号が表示されます。
知らない相手からの電話だと分かれば、電話に出ないという選択も可能です。
より防犯対策を強化したい場合には、迷惑電話防止装置付きの電話機の使用がおすすめです。
迷惑電話防止機能付き電話機は、知らない相手からの着信があった場合、警告メッセージを流したり、会話の録音ができたりする優れもの。
詐欺被害の他にも、強引なセールスの対策としても活用できます。
迷惑電話防止装置付きの電話機は、その効果が認められ、福岡市や東大阪市などでレンタルを実施しています。
さらに神戸市・東広島市・千葉市などでは設置の補助金を出しています。
このようにお住まいの市町村によっては、人数限定で貸与や補助金といったサポートが受けられるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
価格:17,172円
※2022年8月現在
怪しい相手からの電話を見破る意味で、持っておきたい迷惑電話防止装置付き電話機。
シャープの振り込め詐欺対策機能搭載電話機は、電話帳に登録した名前や電話番号の表示のほかにも2つの防犯対策機能を備えています。
それが、自動で相手に警告メッセージを流す「自動着信前警告」機能と、もし相手がそれでも電話を切らない際に、自動で名前を確認するメッセージを流し、相手を確認してから電話に出ることができる「自動聞いてから応答」機能です。
二重の防犯対策機能を搭載しているので、詐欺の電話だけでなくしつこいセールスなど迷惑電話を撃退することができます。
まさにトラブルから身を守るのに適した電話機だといえますね。
普段から家族間で連絡を取り合う
ここまでキャッシュカード詐欺盗の防犯対策として有効な方法をいくつかご紹介してきました。
しかし最も重要なのは、家族間のコミュニケーションです。
もし困ったことがあった時に、高齢者自身が「自分1人でなんとかしなくちゃ」という気持ちに陥ってしまわないよう、日頃から少しでも不安なこと、不思議に感じたことがあれば連絡を取るという関係性を作っておくことが大事です。
忙しい日々を過ごしていると、家族間の連絡も疎かになってしまうのもよく分かります。
しかし、普段の何気ない電話一本、メール一通が、大切な家族をキャッシュカード詐欺盗から守る重要なものになると言っても過言ではないのです。
まとめ
以上、キャッシュカード詐欺盗の手口と防犯対策についてご紹介しました。
いくらメディアで取り上げられても、心のどこかで自分は大丈夫だと油断してしまうもの。
そこで、どういう電話に気をつければ良いのか、もし不審な電話があったらどう動けば良いのか、日頃から家族で話し合っておきたいですね。
大切なお金と、家族の暮らしを守るために取り入れられそうな防犯対策から、ぜひ試してみてくださいね。
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