「特殊詐欺」という言葉を聞いたことがあっても、実際に直面した方は少ないかと思います。
特殊詐欺とは巧妙な手口を使って相手を信頼させ、指定した口座などへ振り込ませるなどして、不特定多数の人たちから現金などをだまし取る犯罪を指します。
いつ誰が対象になってもおかしくない犯罪で、皆さんがよく知るオレオレ詐欺以外にも様々な手口が存在します。
しかし手口を把握しておくことによって、防ぐことができる被害もあります。
本記事では特殊詐欺の種類や犯罪件数だけでなく、対策も一緒にご紹介しますのでぜひ家族で対策を練るようにしましょう。
特殊詐欺10類型とは?
特殊詐欺にも様々な種類があり、手口もそれぞれです。
自信が被害者にならないためにも、しっかりと手口を覚えておき対処できるようにしておくことが大切です。
下記のような内容での電話やメール、その他連絡があった場合には、気をつけるようにしましょう。
詐欺の種類 | 詐欺の内容 |
---|---|
オレオレ詐欺 | 親族が起こした事故や問題に対しての示談金などを名目にだまし取ること |
預貯金詐欺 | 口座が犯罪に利用されているなどの嘘の理由を述べて、キャッシュカードやクレジットカードの個人情報をだまし取ること |
架空料金請求詐欺 | 未払い料金があるなどの嘘を使って、金銭などをだまし取ること |
還付金詐欺 | 税金還付などの嘘の理由を伝え、被害者にATM操作をさせて口座間送金などにより現金をだまし取ること |
融資保証金詐欺 | 実際には融資しないにもかかわらず、融資を申し込んできた人に対し、保険金などの名目で金銭などをだまし取ること |
金融商品詐欺 | 架空の株・価値の乏しい未公開株・外国通貨・高価な品物などに関する虚偽の情報を伝え、購入すれば利益が得られると間違った情報を信じさせて、その購入名目で金銭をだまし取ること |
ギャンブル詐欺 | 不特定多数が目にする雑誌やメールなどに、「パチンコ打ち子募集」などと書き込み、会員登録などを申し込んできた被害者に対し情報料などの名目で金銭をだまし取ること |
交際あっせん詐欺 | 不特定多数の者に対して、メールなどで「女性紹介」等の名目で連絡を取る。女性の紹介を求めてきた被害者に対し、会員登録料や保証金などの嘘の理由で金銭をだまし取ること |
その他の特殊詐欺 | 上記に該当しない方法で、電話などを使って金銭などをだまし取る詐欺のこと |
キャッシュカード詐欺盗 | キャッシュカードが不正に利用されていると電話で連絡し、キャッシュカードを準備させたうえでカードと暗証番号などを窃取すること |
オレオレ詐欺
子供や孫などの親族、警察官や弁護士などになりすました犯人から、家族が起こした事故やトラブルなどを解決するためにお金が必要だという電話をかけてくる詐欺です。
電話では解決のための現金などを要求され、自宅や指定された場所に持ってくるように指示されます。
身内は今会うことができないなどと適当な理由を述べ、受け子と呼ばれる犯人の仲間が現金を受け取り、そのまま連絡が取れなくなります。
電話がかかってきた際に、本当に本人なのか携帯電話や自宅、会社などに確認の連絡をすることで防ぐことができます。
預貯金詐欺
子供や孫などの親族、警察官や銀行員などを装い、口座が犯罪などに利用されているなどの嘘を述べて、キャッシュカードや預貯金通帳などをだまし取る手口のことです。
他にも医療費などの払い戻しやその他の理由でお金を振り込むからなどと、嘘の内容で騙してきます。
その後キャッシュカードなどの変更手続きが必要だと言い、暗証番号なども同時に聞き出してきます。
被害者を急がせることによって、スピーディーに終わらせます。
銀行員やショップ店員がキャッシュカードを回収することはありませんので、疑問に感じた場合は、普段利用している銀行などに連絡して確認を取るようにしましょう。
架空料金請求詐欺
出会い系サイトやアダルトサイトなどの未払いがあると架空の請求を口実にして、コンビニなどで電子マネーを被害者に購入させる手口です。
電話だけでなく、メールやショートメッセージ(SMS)、インターネット画面などで連絡を取ろうとしてくることが多いので、怪しいと感じた場合には画面を閉じたりメールアドレスを変更するなどの対策をとるといいでしょう。
コンビニなどで電子マネーカードなどを購入させ、その情報を聞いてくるのは詐欺です。
「裁判」や「今払えば保険で全額返金される」など急がせる言葉には注意していきましょう。
特にメールやショートメッセージなどに記載されている電話番号に電話を掛けたり、URLを開いたりしないようにすることで防ぐことができます。
還付金詐欺
自治体や税務署、年金事務所の職員を装って、税金還付などに必要な手続きであると嘘を述べ、被害者にATMを操作させて現金をだまし取ります。
「還付金がある」「ATMで手続きができる」などの言葉は詐欺である可能性が高いので、疑うようにして下さい。
また「払い戻しには期限がある」というような言葉で焦らせて、携帯電話も持ってすぐにATMに向かうように指示をしてきますので騙されないでください。
融資保証金詐欺
何らかの名簿を使って、ダイレクトメールやハガキなどを送ってきて誘い込みます。
あたかも融資をするように見せかけ、逆に現金をだまし取るのです。
融資を申し込めば、補償金や登録料などの名目で金銭を要求し、支払った後はそのまま連絡が取れなくなってしまいます。
お金がどうしても必要な被害者の心につけ込んで、「即日融資実行」や「90日間無利息」などの飛びつきたくなるような条件を出してくるケースがほとんどなので、好条件の時こそ注意が必要です。
金融商品詐欺
架空・価値の乏しい未公開株・有価証券・外国通貨などに関する嘘の情報を伝え、利益が得られると信じさせて金銭を騙し取る手口です。
とても話がうまく、話し方や伝え方が丁寧で親切すぎるくらいの対応をしてきます。
金融商品詐欺の場合、複数の業者が入れ替わりで電話をかけ、投資欲をあおってくる場合もあります。
最近では、名前を貸すだけでお金が貰える、過去に被害に遭い購入した未公開株を買い取るなどの上手いことを言い、騙し取ろうとする方法が増え続けています。
聞き覚えのない会社名などの投資話はほぼ詐欺ですので、「絶対に儲かる」などの言葉が出てきた場合には疑うようにしましょう。
ギャンブル詐欺
インターネット記事・電話・メールなどで、「宝くじの当選番号を教える」「パチンコの必勝法を教える」などと持ち掛け、その情報に対する登録料や情報料などの名目で金銭を騙し取る手口です。
宝くじの当選番号が分かるので、明日の新聞を確認してほしいなどと被害者に嘘をついてくるのですが、本当に当選番号が載っているので信じてしまうそうです。
ですがそれは当選発表から新聞掲載までに時間差があるためで、当選番号を知っているわけではありません。
このようなうまい話しは詐欺であると考えておきましょう。
交際あっせん詐欺
メールや雑誌・ネット掲示板などに記載された「女性紹介」などの案内に申し込んできた被害者に対し、会員登録料や保証金などの名目で金銭を騙し取ろうとしてきます。
他にも紹介する女性(男性)と会うことでお金がもらえるなどの嘘をつき、会員登録料を支払わせようとする場合もあるのです。
最近では知らないアドレスからのメールに張り付けられているURLをクリックしてしまい、出会い系サイトへ誘導させるパターンも増えています。
アクセスしてしまえばサイトに自動登録されてしまう場合もありますので、怪しいURLは開かないようにしましょう。
他にもSNS上や芸能人のなりすまして出会い系サイトへの登録をさせようとしてきますので、本当に安全なサイトなのか確認して開くようにしてください。
その他の特殊詐欺
上記で紹介した特殊詐欺以外にも、様々な方法で金銭をだまし取ろうとする犯罪者がいます。
見覚えのない電話番号からの着信やメール、振込を急かされるなど、少しでも怪しいと感じた場合には詐欺を疑いましょう。
気になることがあった場合には1人で考え込まず、家族や警察に相談することで、被害を防ぐこともできますよ。
キャッシュカード詐欺盗
警察官や銀行員などを装い、キャッシュカードや銀行口座が不正に利用されているなどと被害者の不安を煽り、カードをすり替えて盗み取る手口です。
最近被害が増えている特殊詐欺の1つで、カードをすり替えられた場合は、口座の中の現金を引き出されてしまいます。
口座を保護するために暗証番号も教えて欲しい、銀行印を貸してほしいなどと言ってきますので、個人情報は絶対に他人には教えないようにしてください。
特殊詐欺の被害件数や最新データ
ここからは警視庁の最新データを元に、被害件数や被害額など特殊詐欺の現状をご説明いたします。
また最新データも一緒に確認することで、対策や急な詐欺に対する構えができますので、確認しておくといいでしょう。
被害に遭わない為の対策も次の章でご紹介しますので、特殊詐欺という犯罪から身を守ってくださいね。
最新|特殊詐欺の認知件数
特殊詐欺として認知されている犯罪の発生件数はこのようになっています。
発生年 | 特殊詐欺の発生件数 |
---|---|
2012年 | 8,693件 |
2013年 | 11,998件 |
2014年 | 13,392件 |
2015年 | 13,824件 |
2016年 | 14,154件 |
2017年 | 18,212件 |
2018年 | 17,844件 |
2019年 | 16,851件 |
2020年 | 13,550件 |
2021年 | 14,498件 |
発生件数を見てみると、2017年頃一時増加傾向にあった特殊詐欺が、2020年には少し減少しているのがわかります。
2021年は自宅時間が増えたことにより、高齢者の対策が難しくなってしまい、少し増加してしまったのかもしれません。
この数値は警察が認知できている件数ですので、これよりも多く発生している可能性もあります。
また同じ特殊詐欺の中でも、オレオレ詐欺は増加傾向、架空料金請求詐欺は減少しているようです。
最新|特殊詐欺の被害額
続けて、特殊詐欺の被害額についてです。
発生年 | 特殊詐欺の被害額 |
---|---|
2012年 | 364.4億円 |
2013年 | 489.5億円 |
2014年 | 565.5億円 |
2015年 | 482.0億円 |
2016年 | 407.7億円 |
2017年 | 394.7億円 |
2018年 | 382.9億円 |
2019年 | 315.8億円 |
2020年 | 285.5億円 |
2021年 | 282.0億円 |
数字やグラフを見てはっきりとわかるように、2014年まで増加し続けていた特殊詐欺の被害額が、どんどん下がり続けています。
件数はそこまで大きく落ちていませんが被害額が減少しているということは、平均の被害額が減っているのでしょう。
特に2019年以降は、自宅時間の増加により家族間の連絡が容易になったお陰か、被害額が大きく減少しています。
2021年|特殊詐欺手口別の認知件数
【2021年|特殊詐欺手口別の認知件数】
- オレオレ詐欺:3,085件
- 預貯金詐欺:2,431件
- 架空料金請求詐欺:2,117件
- 還付金詐欺:4,004件
- キャッシュカード詐欺:2,602件
- 上記以外:259件
2020年度までは「オレオレ詐欺」が発生件数が1位でしたが、2021年度は還付金詐欺が上昇しています。
オレオレ詐欺に関してはまだまだ件数はありますが、対策が呼びかけられ、少しずつ減少しています。
しかし新手の特殊詐欺も増えてきていますので、その対策も考えていかなければいけませんね。
2021年|特殊詐欺手口別の被害額
【2021年|特殊詐欺手口別の被害額】
- オレオレ詐欺:90.6億円
- 預貯金詐欺:30.5億円
- 架空料金請求詐欺:68.0億円
- 還付金詐欺:45.1億円
- キャッシュカード詐欺:39.4億円
- 上記以外:8.0億円
2021年の特殊詐欺手口別被害額を見てみたところ、オレオレ詐欺の被害額が最も多いです。
続いて架空料金請求詐欺ですが、オレオレ詐欺に比べると20億円程の差があります。
他にも新型コロナウイルス感染症に便乗して、給付金や助成金など騙る詐欺が出てきています。
詐欺グループもその時の情勢に合わせて、頭を使って動いていることが分かります。
そして被害額が多い詐欺の手口は90%以上が電話での連絡になっていますので、知らない番号からの通知などは注意しなければいけません。
2021年|特殊被害の多い都道府県ランキング
都道府県別に特殊詐欺の被害が多いところはどこなのかを見てみましょう。
上位圏にお住まいの方は、特殊詐欺の被害者になる可能性も高くなりますので、気を引き締めていきましょう。
都道府県名 | 認知件数 |
---|---|
東京都 | 3,319件 |
大阪府 | 1,538件 |
神奈川 | 1,461件 |
千葉 | 1,103件 |
埼玉 | 1,082件 |
愛知 | 874件 |
兵庫 | 859件 |
2021年国内での特殊詐欺認知件数は、14,498件です。
上位7の都道府県で、10,236件の特殊詐欺が発生しており、全体の70%以上を占めていることから人口が多い大都市圏が狙われていることが分かります。
上位7都道府県以外にも、福岡や静岡、茨城や宮城なども続いて多い地域になっていますので、注意が必要です。
もちろん住んでいるところの被害件数が多くないから大丈夫だとは思わず、対策はしっかりと行っておきましょう。
特殊詐欺の被害に遭わないための対策
ここからは、特殊詐欺の被害に遭わないためにできる対策を見ていきましょう。
できることから始めるだけで、被害を抑えることができますので、自分は大丈夫だと思わずに行動することが大切です。
【特殊詐欺の被害に遭わないための対策】
- 家族間で合言葉を決めておく
- 折り返しの電話をして確認する
- 常に留守番電話設定にする
- 迷惑電話防止機器を使う
- 個人情報は絶対に話さない
- ハガキなどにある電話番号には連絡しない
- 公的機関の名を出されても信用しない
- お金を払う前に家族に相談
家族間で合言葉を決めておく
電話などの場合は、相手の顔が見えないので本人かどうかわかりません。
家族間で合言葉を決めておくことで、顔が見えない場合でも本人なのかどうか確認することができますね。
緊急時電話で連絡を取る場合には、まず合言葉を言う、怪しいなと思った場合には合言葉を言うように電話の相手に確認するなど、日頃から癖付けることで対策になります。
合言葉をごまかす・忘れたと答える場合は、詐欺を疑うことができます。
家族で簡単に取り組むことができる、一番の対策です!
折り返しの電話をして確認する
オレオレ詐欺などの電話での詐欺の場合、一度かかってきた電話を切り、本人の携帯電話にかけて確認するという方法です。
かかってきた電話でいろいろとやり取りを進めてしまうと、そのまま詐欺にあってしまう可能性が高くなります。
お金の話が出た場合には、一度電話を切ってかけ直しましょう。
常に留守番電話設定にする
固定電話や携帯電話も、留守番電話設定を行っておくことで防ぐこともできます。
本当に用事がある親族や友人などであれば、留守番電話にメッセージを残します。
留守番電話のメッセージを確認した後でかけ直すことで、不審な電話を受けることがなくなります。
また特殊詐欺グループは、自分の音声が録音されることを嫌うので、留守番電話に繋がった場合には電話を切ってしまいます。
電話が繋がらなければ、電話による特殊詐欺の被害に遭わずに済むので、対策とおすすめです。
折り返しが面倒な場合は、留守番電話に繋がり相手が名前を言ったタイミングで電話に出るという方法もあります。
迷惑電話防止機器を使う
家電量販店などでは、警察から情報提供されている電話番号からの着信を、自動で拒否する機能を備えた防犯危機が販売されています。
なので迷惑電話防止機器を使うだけで、怪しい電話番号からの着信を受けることができなくなるのです。
ただ、それだけでは不安な部分もあると思いますので、他の対策と合わせて行うようにしてください。
個人情報は絶対に話さない
電話口や知らない相手に、個人情報は絶対に話さないようにしましょう。
まず他人が個人情報を求めてくる時点で詐欺である可能性が高くなります。
さらに電話口であったり、急かしてくる場合は怪しむことで被害を防ぐことができるのです。
特に銀行口座の暗証番号や電話番号などは安易に人に教えない、聞き出そうとしてきた場合には一度家族に確認するなど、徹底して教えないようにする対策をしましょう。
ハガキなどにある電話番号には連絡しない
はがきやメールなどを使って、金銭をだまし取ろうとする手口も多くありますので、見覚えがない場合には電話をしないようにしてください。
記載されている番号に電話をかけてしまえば、相手にこちらの番号がわかってしまい、今後他の詐欺もかかってくるかもしれません。
どうしても気になる場合には、インターネット検索で電話番号を入力して、相手の身元を確認してみるといいでしょう。
実在するお店や公共機関の場合は検索するとすぐに出てきますので、電話をしても安心です。
公的機関の名を出されても信用しない
銀行や警察など、公的機関が電話で個人情報を抜きだそうとすることは絶対にありません。
まずは公的機関の名前を出されても信用しないことが大切です。
万が一かかってきた場合には、後ほどかけ直すと伝え、自分で調べた番号に連絡するようにしてください。
かけてきた電話口だけで終わらせようとする場合には、詐欺の可能性がかなり高くなります。
お金を払う前に家族に相談
怪しいと感じていても不安になり、お金を払ってしまうケースもあります。
電話やメールなどでお金を要求された場合には、まず家族に相談するようにしましょう。
一度話して落ち着くことでしっかりと判断することができますし、話を聞いた家族が怪しいと感じ取ってくれ、防ぐことができます。
まとめ
本記事では、特殊詐欺の内容や対策を中心にお伝えしました。
特殊詐欺の被害件数も被害額もピーク時に比べると減少しているものの、大きな変化はありません。
昔に比べて特殊詐欺を警戒する方も増えてきてはいますが、犯人もそれ以上にお金を騙し取ろうと様々な手法で仕掛けてきます。
対策を徹底することで防げる被害も沢山ありますので、ご自身だけでなくご家族で取り組んでいきましょう。
コメント